十八歳の彼 十二歳の僕 ‐5‐

時間は少し前に遡り、場所は里一番の権力者がおわす執務室。 五代目火影である綱手が珍しく真面目に書類と格闘している横で、その仕事を手伝うでもなく傍観を決め 込んでいるのは大きい方のナルトだった。 「―――――とまぁ、そーゆーことがあったんだってば」 「馬鹿言うんじゃないよ」 まさに、一刀両断。 「お前が二人だって?そんなことあって堪るか。騒々しすぎて、それこそ悪夢じゃないか」 『いや、十二歳っつったら可愛い盛りで目の保養にはなるんだろうけど』と。 危ないお姉様的発言をした実年齢不詳の美女が、心なしかうっとりと呟く。 『可愛い』という単語を耳にしたナルトは、記憶の中から異世界トリップを実体験している最中のちまい ナルトを引っ張り出し、盛大に唸った。 「ん〜……アレは可愛くはないってばよ?憎たらしいくらいテンポの良い会話するから頭は良いんだろう けど、性格悪いし態度デカイし口も悪いし…………うん、やっぱり可愛くないってば」 むしろ、美人。 元は同じ顔のはずなのだが、内面的なモノが違うだけで、子供時代の自分とはまったくの別人にしか見え ない。 ぱっと見でそれを判断するのは、実はそう難しくはないだろう。 自分とは一番異なるのは、目だ。 全てを受け入れ、そのくせ全てを拒絶しているような。 己一人で世界が完結していると物語っているかのような、無機質な深い青。 もちろん、明るい光を宿したりと、感情の起伏はあるようだけれど。 「でも、スッゲェ悲しい目してたんだ。同じモノ抱えてる俺でも気安く突っ込めないみたいな…………な んだってば?」 忙しなく動かしていた手を止めて驚いた顔をする綱手に、首を傾げる。 「…………冗談なんだろう?」 「なんで俺がばーちゃんに冗談言わなきゃなんないの?」 「だってそんな、非現実的なこと…………」 「でも実際いるんだってば。この里に―――――っつーか、俺の家に」 「だったら一度会ってみたいもんだね」 「会ってどうすんの」 ナルトの声音が硬くなったことを感じ取った綱手が、小さく笑う。 「馬鹿だね、何もしやしないさ。その子が里に害をなす存在ならまだしも、お前がノンビリ構えてるって ことは今のところはそうじゃないんだろう?」 「うん、それはないってば。里のことは嫌いみたいだけど、実際にどーこーしようとは思ってないみたい だから。でも、会うにしてもアイツの意思を聞かないことにはどーにもならないってばよ」 「なら、私が『会いたい』と言っていたって、その子に伝えてくれないか?了解取ったら連れておいで」 「わかった、一応伝えてみるってば」 「頼んだよ」 じゃあ俺そろそろ、と。 ナルトが立ち上がりかけたその時だった。 「うずまき上忍!」 あろうことか執務室になんの断りもなく入室してきた、なぜかボロボロの一人の男。 見覚えはあるが名前までは思い出せない男の切迫した顔にぎょっとしたナルトは、小さくどもりながら立 ち上がった。 「な、なんだってば?」 「大変です!うずまき上忍の偽者を、奈良上忍、油女上忍、犬塚上忍の三人が連れ帰りました!」 偽者。 「それって……ま、まさかチビ!?」 早速とばかりに起きてしまった、一騒動。 綱手は小筆を放り投げ、たとえシズネが喚こうと、エスケープを断行することにした。 企画部屋  
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