二人で決めた待ち合わせ場所に。
市販のカップラーメンがぴったり出来上がるだけの時間遅れて、ようやく現れたシカマルの
未来の嫁さんこと『うずまきナルト』は。
仕事帰りなのか、いつも身に着けているオレンジ色のジャケットではなく、暗部服の上にそ
の小柄な身体をすっぽり覆うように黒い外套を着込んでいた。
木の葉では禁忌とされる狐の暗部面を外し、フードを下ろすと。
露わになったのは、場違いなほどお奇麗な顔。
太陽の光を弾く金糸の奥にある、透き通るような青い双方にシカマルが映ると、ナルトは生
来の強い眼光を幾分か和らげ、微笑んだ。


「悪い。ジジイとの話がちょい長引いちまって遅れたわ」

「任務だったのか?」
 
「そ。さっき里に帰ってきたばっか」

「―――――っつーことは、やっぱ今日もキバの奴と一緒だったのかよ」

「いや、今日は俺一人。それにしてもお前等、なんでそこまでお互いのことが気になる訳?
キバもキバでしつこいしさ、俺としては『いい加減にしろ☆』っつって思いっき
りドツキたくなるんだけど」

「『なんで』って…………本気でわかんねぇの?」


シカマルのムッとしたような顔を見て、ナルトは意地悪く笑った。


「わかるよーな、わからないよーな。でもどっちかって言うと、たぶんわかってんだと思う
ぞ」

「なら聞くなよ。お前、やっぱ性格最悪だわ」

「最悪上等。そのおかげで今の俺があるんでね」


わざとらしくも白々しい優雅な一礼が、なぜかナルトには異様にハマッていた。
当たり前のように着こなしている暗部服ではなく、煌びやかな衣装を纏ったら、どこぞの王
族を騙っても、誰も疑いはしないだろう。
それだけ、ナルトが持つ空気は良い意味でも悪い意味でも特殊で、世間様から浮いているの
だ。
そこが堪らなくいい、と。
そう思っているシカマルは、すでに重症である。
ナルトは更に笑みを含め、パンッと手を打ってその話を打ち切った。






「よーし、じゃあそろそろ始めっか。この前の続きから。シカマルってば意外と飲み込み早
いから、教えがいがあるぜ。今日はもう一段階くらいレベル上げていこーな☆」












夫婦の余暇

ナルトの指導には、容赦というものが一切ない。 『強くする』ためにはどれだけ理不尽で無茶で無謀なことでも、平然とやってのける。 下忍であろうとなんだろうと、『死にたくなければ動け』とでも言わんばかりにハイレベルな 術や体術を繰り出し、すでに修行の域を軽く逸脱している行為を止めようとしないのだ。 普通の人間なら数分ともたず根を上げることは間違いないが、シカマルは並々ならぬ決意の 末にナルトの指導を受けているから、たとえキツかろうがなんだろうが、始めから『中途半 端なまま投げ出す』ということは頭の中になかった。 無論、ナルトだって鬼ではないし、未来の夫を殺す気など毛頭もないから、とりあえずシカ マルの身の安全は保障しているつもりである。 とりあえず、の話ではあったが。 「おーいシカマル、生きてっか〜?」 「…………一応、今日もなんとか」 丈の小さな草が生える地面に仰向けに寝転がったシカマルは、荒い息遣いのまま答える。 疲労困憊であることを包み隠さず表に出しているその顔は、どれだけナルトの指導が半端で はないものだったか、如実に表していた。 ほんの少し案じるように見下ろしていたナルトも、その応えにほっと息を吐き、シカマルの 頬をピタピタと叩く。 「良かった、おつかれさん。今度こそ殺しちまったかと思った」 「こんなことで、死んで堪るかってんだ。もし、そうなったら、うちのお袋に『奈良家の恥 さらし』っつって、墓石蹴られちまうし…………」 「無理して喋んなくてもいいってば。はい、とりあえず水ね」 ナルトから竹筒に入った水を受け取ったシカマルは、大仰な動作で上体を起こし、頭から水 を被った。 短時間だけの水流がシカマルのほてった顔から熱を奪い、心地良い清涼感を提供してくれる。 残りの水を一気に飲み干すと、そこでようやくシカマルは落ち着いたようだった。 「美味い?」 「結構…………なんだ、この水。水道水じゃねぇみてぇだけど」 「塩素とか、そーゆー不純物が入ってない清水だかんな。所謂『名水』ってヤツ。疲労回復 にいーんだってさ。また今度汲んできてやるよ」 「あぁ、それで」 何かに納得したようなシカマルに、ナルトが訝しげな視線を向ける。 今の説明のどこにその要素があったのかわからない。 「ん?」 「どーりでお前から水場の匂いがすると思った。上に着てるその外套、濡らしただろ」 シカマルの指摘に、ナルトが片眉を上げる。 「ご名答。よくわかったな」 「カラッカラに晴れた日にはよくわかんだよ。土埃が舞ってどこもかしこも埃っぽいのに、 お前からはそんな匂いしねぇから」 それを聞いたナルトは口角を上げ、満足そうに頷いた。 「俺、シカマルを侮ってたみたい。キバ以外にもこーゆーことに鋭い人間っているのな。任 務に支障が出ても困るし、以後気を付けマス」 貴重な御意見どーもアリガトー☆、と。 駄目出しをされたも同然なはずなのに、あっけらかんと。 さも嬉しそうにニコニコと笑うナルトに、『別に』と素っ気無く顔を背けたシカマルだったが、 まんざらでもなさそうだ。 それにしても、と。 照れ隠しでもするかのように話題を変えたシカマルは、徹底した重装備のナルトを改めて見 ると、理解できないとでも言うような顔をする。 「その格好、暑くねぇか?」 ナルトにとってはシカマルに修行をつけることは、それこそママゴト同然のお遊びだろうが、 任務でもないのに重装備のまま動き回ることは本日の気候ではかなり辛いはずなのに、ナル トは脱ぐ気配さえ見せない。 なぜ? シカマルの素朴な疑問に、ナルトが小さく唸る。 「メチャクチャ暑い」 「だったらソレ、脱げばいーじゃねぇか」 「できるならとっくにそーしてるって。俺、太陽光に弱いから、あんま素肌晒してっとあと が辛いんだよ。部屋の中でも気ぃ使うんだぜ?」 「そりゃまた厄介な―――――って、ちょっと待て」 話が矛盾している。 「俺が日向に挨拶に行った時、脚といい胸元といい、結構露出激しくなかったか?」 「日向の本邸は、直射日光が入らないようにリフォームされてっから平気なの」 「あのドデカイ屋敷を丸ごと改装したってのか!?」 「そ」 「お前一人のために?」 「みたいだな」 「…………どれだけ金を掛けたんだか」 「さぁ?日向の財産の中では、微々たるものだと思うけど」 馬鹿言わないで下さい、ナルトさん。 あの文化財級の屋敷を改装した費用が、微々たるものな訳ないじゃありませんか。 しかし。 そんなシカマルの心の声など、日向の手によって『蝶よ花よ』と大切に育てられてきたナル トには聞こえない。 「でも、ありがたいことだよな。そのおかげで本邸にいる時は、なんの気兼ねもなく過ごせ るんだからさ」 「日向って怖ぇ…………」 そして、それを当たり前のように思っているナルトもまた、実は『常識』というものから遥 かに掛け離れた場所にいるから余計に怖い。 「日向が怖いとか、そんなんはどうだっていーだろ。それよりも、シカマルに言われてはっ きりと自覚したら余計暑くなってきた。どーしてくれんの?」 「知るかよ。上だけでも脱げばいーじゃねぇか。幸い、今いる場所は木陰な訳だし?ここに 入ってれば大丈夫だろ」 「まぁ、そーなんだけど…………」 「なんだったら日焼け止め付ければ?」 「そこまでするのは、なんか女々しいからヤダ」 どういう理屈だ。 「お前も大概ワガママだよな。んでもって、言動が支離滅裂」 「うっさい。ま、いっか。そこまで言うなら、あとで困ることになってもお優しい旦那様が どーにかしてくれんだろ?フォローは任せた」 「俺かよ―――――って、お、おいっ!」 首元の留め金を外し、闇に溶けるような漆黒の外套と、そればかりか厚手のベストまで脱い だナルトは。 涼しー♪、と。 大変ご機嫌が麗しいご様子。 確かに防具としての役割も兼ねているそのベストはあまり通気性に優れてはいないようだっ たが、そんなことよりも自分の目に思い切り体当たりしてきた光景に、シカマルは驚くより も何よりも先に焦ってしまった。 上手く外套の中に隠してあったのだろう。 背の中ほどまである金色の髪は、ろくな手入れもしていないだろうに艶やかで、適当に一つ 結びにされている。 飾り気もない髪型のはずなのに洗練されているような印象を受ける。 そして、身体の線をもろに出しているタンクトップの状態からわかるのは。 未発達ながらも緩やかな曲線を描く双丘と、反則的に細い腰。 つまるところ、明らかに『男』とは異なるそのラインが表すのは。 「お前、今女だったのかよ!?」 赤いような青いような、それでもやっぱり赤の割合が多いシカマルの顔を真っ直ぐに見返し たナルトは、今更すぎる事実確認に少々傷ついていた顔をした。 「よーやく気付きマシタ?水の匂いには気付いて女の匂いには気付かないなんて、失礼にも ほどがあると思うんデスけど」 本来なら男だというのに、こんな時ばかり『女』である自分を前面に持ってくるナルト。 それを理由に責めてもいいのだが、事実シカマルはナルトの性別が変わっていることに今の 今まで気付かなかったし、そもそもナルトに勝てる訳がないのだから、そんなことは始めか ら到底無理な話である。 「い、いや、マジで悪いっつーか、面目ないっつーか…………」 その慌てぶりに。 今のシカマルにとっては目の毒でしかない身体を恥ずかしげもなく晒したナルトは、小さく 噴き出した。 「嘘だって。俺がそんなことで目くじら立てる訳ねぇだろ。俺はもともと男だし、女になっ てる時間もほんのわずかだから、普通の女とは違うの。女だって気付かなかった?んなの当 然だ。男として振舞ってたんだから、そう見えてくれなきゃ困る」 俺に女心ってヤツがあるなんて、まさかそんなことホントに考えてた訳じゃねぇだろ? ナルトにそう問われたが、シカマルは答えに窮した。 普通の女じゃない。 言われてみればその通りかもしれないが、だからと言って『はい、そうですか』と簡単に納 得していいものなのか。 だってこれでは、あまりにも自分が情けない。 「そーゆーもんか?なんか微妙に的外れっぽいけど」 「そーゆーもんなの。少なくとも、俺にとってはね」 気力を削ぐようなナルトの笑顔によって、シカマルが抱いていた釈然としない思いは無理矢 理封じ込められてしまう。 お前には敵わねぇ、と。 たっぷり沈黙した後、シカマルは降参の言葉をボソリと洩らしたが、それが表面上での話で あることは疑う余地もない。 そんなシカマルの考えなどお見通しなのか、ナルトは結い紐を取り、髪の縛り癖を直す仕草 をしながら、他人に認識されている自分が男か女かなどというちっぽけなことよりも、自身 にとってはよほど現実的な問題を口にした。 「俺が一番困ってんのは、今―――――っつーか昔からなんだけど、いつ女に変化するのか まったく予測が立てられないってことだな」 「予測が立てられない?」 「そ。何せ腹ん中にいるのが満月の夜か新月の夜かで妖力に波の出る化け物だからさ、今ま ではそういったもんで変化すると思ってたんだ。だけど、夜だけじゃなく朝でも昼でも、所 構わず変化すんの。大体の周期はあるから定期的と言えなくはないんだけど、結局それも奴 の気分次第なんだ。それこそ、下忍任務の真っ最中だって奴は待っちゃくれない」 以前ナルトから聞いたのは、もともと男であるナルトがなぜ真逆の性別になってしまうのか ということだ。 ナルト本人も【九重の奴、すっげぇ煩わしそうに適当な説明しかしてくれなかったから、そ れが定かかどうかは俺自身にもわかんねぇぜ?】と言っていたから、信頼できる情報ではな いかもしれない。 だが、ナルトがそう納得しているのなら、いくら許婚とはいえ赤の他人であるシカマルがど うこう言う筋合いは始めからないのだ。 その理由というのは、ナルトに言わせると『力勝負に負けたから』。 今のナルトの身体には二つの魂が宿っている。 一つはもちろんナルトのもの。 そしてもう一つは伝説の大妖のものであり、本来ならばありえないことなのだが、どちらの 人格も損なわれることなく、同時に存在し続けている。 実の息子に九尾を封じた四代目火影が偉大なのか、はたまた『器』の性能が良いのか。 シカマルは断然後者だと考えているが、里人だったらけしてそんな事実は認めないだろう。 とにかく、『封印』という名の接着剤により、本来ならば対面するはずもなかった二つの魂が 同居することになった。 そこで問題になったのが、九尾が持つ性が『男』で、ナルトが生まれ持った性もまた『男』 だということだ。 もともと、極端に自己主張が強い二人のこと―――――まぁ、反発し合うのは当然の流れと いうもので。 結果、『器』の存在が危ぶまれるほどの主導権争いが勃発。 だが、いくらナルトが只人でなかろうと、所詮は『人間』であり『赤子』だった。 二つの意思はひたすら反発し合っていたが、悠久の時を生きてきた九尾に生まれたばかりの ナルトが勝てるはずもなく、勝敗はすでに決していたのだ。 負けたナルトは男の性をねじ伏せられ、九尾の住み心地が良いように、いろいろと弄られて しまったのだという。 つまり、反発がない『女』の身体に改造されてしまったという訳だ。 ナルトにとって幸いだったのが、いくら伝説の大妖といえども、封印されている状態では完 全に性別を変えるだけの力はなかったということだけ。 そういった事情をあらかじめ知らされていたシカマルだったが、『下忍任務の真っ最中』とい う言葉を聞いて、信じられないとばかりにナルトを見返した。 「おいおい、それってマズくねぇか?」 「もちろん、マズイさ。だから女に変化すると同時に、今度は自力で男に変化しなきゃなん ねぇの。ちょっとでもタイミングをずらしたらアウト、これはもう反射神経の問題だな。二、 三度そういう事態に陥ったことがあるけど、心臓に悪いのなんのって…………何せ、前触れ なんて親切なもの、奴は一度も出したことないんだから」 「九重さんに交渉とかはできねぇの?」 「無理。んなことしたら、今度から面白がってもっとヤバイ場面で女にされっかも」 『あ、考えたら腹立ってきた』と。 吐き捨てるように言ったナルトは、シカマルの目の前で表情を厳しくした。 悲壮感がまったくない美人のそんな顔は、充分鑑賞に堪えうるものだ。 シカマルがさりげなく魔性の青を覗き込む。 「…………なんかあったのか?」 「俺がこうなったの、ついさっきなんだ。敵の攻撃を受けてる時で、アレはちょっとさすが に厳しかったなぁ〜…………一瞬、『あ、死んだかも』って思っちまった」 下忍任務の真っ最中よりも、更に悪い状況下での変化。 懸命に命の遣り取りをしている大家に、その仕打ちはないだろう。 「抗議しろよ!」 聞き捨てならないとばかりに、ナルトがシカマルを睨んだ。 「とっくにした。そしたら大笑いされただけ」 「…………それだけ?」 「それだけ。アイツにとっては遊びの延長線でしかねぇの。だから『負け犬が何を今更』っ て、相手にもされない」 「随分と無神経だな、おい」   「いや、無神経ではないと思う。ただ無責任なだけで」 「そっちの方が性質悪いじゃねーか」 そのせいで、ナルトが冗談では済まされない事態に陥ったら? 原因が原因なだけに喜劇じみているように思えるが、それだけは笑うことができない。 ナルトの腹の中の妖狐様が一体何を考えているのか、一度じっくり話し合う必要性が感じら れた。 ―――――まぁ、ナルトでも相手にされないというのだから、おそらくシカマルなど道端の 小石ほども意識されてはいないのだろうが。 「ま、実際は変化するだけなんだからいいさ。そこら辺の奴に不覚をとるほどオチちゃいね ぇつもりだし。九重だって死にたくねぇだろうから、いざとなった自粛するか援護するくら いの配慮はするだろーよ」 「それでお前はいいのかよ」 一瞬きょとんとしたナルトは、なぜか恨めしげなシカマルの視線を受け、そしてニヤリと笑 った。 「心配してくれてんの?」 「―――――ッ!わ、悪いかよ!!」 キラキラと光り輝く笑顔を前にしたからか、それとも核心を突かれて動揺したのか。 むしろ、その両方とも言える理由でシカマルは顔を赤くした。 晴れやかに笑ったナルトが、シカマルの両肩をバシバシと叩く。 「照れるな照れるな。そっかぁ〜旦那さんは俺のことそんなに心配してくれてたんだ〜」 「お前、面白がってるだろ!?」 「だって面白いんだもん」 『俺と関わった奴は、最終的にはみ〜んな俺の心配し始めるんだ』と。 ナルトは鈴が鳴るように笑う。 本当の意味で出会ってからわずか数日でその域に達してしまったシカマルが、ナルトのツボ に見事に嵌ってしまったらしい。 確かに、ナルトの複雑な生い立ちを考えれば別段おかしなことではないかもしれない。 ナルトは、シカマルにとって厄介なことに誰からも好かれる素晴らしい才能を持っているが、 その反面、里人にとっての憎悪の対象でもある。 そんなナルトを純粋に気遣う人間は、ナルトの後見役を勤める一族や三代目、名家の当主陣 を含めてもそう多くはないはずだ。 物珍しい気持ちはわからなくもないが、だからこそ真剣にナルトの身を案じているシカマル が、ナルトの態度に理不尽さを感じずにいられようか。 「マジでお前、その性格の悪さをどーにかしろ」 「どーにかって、俺は具体的にどーすりゃいいんだよ。言わせて頂きマスけど、俺は生まれ た時からずっとこの性格だから、どーにかする術があったとしてもどーにかするつもりはま ったくゴザイマセン。更に言わせて頂くと、シカマルはそんな俺の伴侶で、俺がそうと知っ ていながら俺との関係を受け入れたんだぜ?」 そんなことを言われてしまえば、もとも子もないのだが…………。 ナルトとの結婚話は、本当にこのまま進めてもいいのだろうか? 果てしない疑問を覚えたシカマルは、周囲に目に見えない哀愁を漂わせ、それと同時に遠い 目をした。 夏近い空は、雲一つない快晴。 遥か上空にある太陽が、梢の間から柔らかな光を落としている。 日差しの割に気温はそう高くはなく、日陰に入ってさえいれば快適と言えるだろう。 現実逃避もソコソコに、シカマルが静かに視線を戻すと。 風に煽られて梢の影が動くたび、ナルトの神秘的な瞳の濃度が変わる様が、シカマルの目に やけに綺麗に映った。 しかし、綺麗なことに変わりはないのだが、そこからは上手くナルトの感情が読み取ること ができない。 シカマルに挑んでいるようにも、苛ついているようにも見える。 そして、笑いかけているようにも、怒っているようにも。 マズイかもしれない。 それを本能的に悟って言葉を詰まらせたシカマルは、無意識にゴクリと咽を鳴らす。 これ以上ナルトを刺激しないよう慎重に言葉を選ばなければならないのは、いつものことな がら酷く面倒だった。 「…………これからの俺の苦労が偲ばれるぜ」 「呆れた!気が早いぞ、シカマル。まだ体験したこともない苦労を偲ぶなよ」 いやいやいやいや。 ナルトさんには、今でも充分苦労させられていますとも。

END

†††††後書き††††† 暗い話ばかりを書いていたら、なぜか書きたくなったほのぼの。婚約時代シリーズ、第四弾 です。シカとキバの直接対決は少しだけ先延ばしにして、ナルトがナルコちゃんになってし まう理由を、ここで初めて明らかにしました。いやもーホントにたいしたことありませんが。 閑話休題的話になっていると思います。息抜きに最適、かも。 さて、次の更新どうすっか…………。
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