砂漠に降る雪 ‐弐‐
  「さて、刹那。どういうつもりなのか説明して頂けますか?」
地を這うようなおどろおどろしい声音に、刹那はわずかに身を震わせた。
「ど、どういうつもりって…………俺はただ単に、今がチャンスかなぁと思っただけであっ
て、別に悪事を企んでるとか、そういう他意はまったくないぜっ」
「チャンス?」
訝しげな伊吹の鸚鵡返し。
それに何度も頷き、刹那は黒曜石のような両眼を眇めた。
「奴と接触するんだろ?それって、坊がいたら絶対できないことだよな」
『奴』とは、もちろん『奴』のことである。
余命を宣告された時に、『このことは誰にも知らせない』と言い切ったナルト。
だが、四人はただ一人には伝えておこうと思ったのだ。 それが本意であろうとなかろうと、『何よりも大切な小さな主が彼のことを慕っているのを間
近で見てきて知っているから、自分達が納得できないことでもやってみせる』と。 本当に本当に、本意ではないが。 「…………そういえばそうですね」 彼と同僚であった安曇は、彼が『ナルトのために』という大義名分で何をしでかしてくれた
か、その事実を実際に目にしてきた人間の一人である。 その時は激しい憤りを感じたし、できることなら地の果てまでも追いかけて、この手で殺し
てやりたいとまで思った。 しかし、そうしなかったのは、絶対の存在であった教育係を失った時のナルトの消沈ぶりが、
存外酷かったからである。 少しでも目を離せば『捨てられた自分になど価値はない』というような言葉を口走りながら
自殺未遂をしたり、泣き疲れてようやく眠ったと思ったら夢遊病患者のように動き始めたり。 それこそ、並みの精神病患者など可愛いものだと胸を張って断言できるような、目も当てら
れぬ状態だったのだ。 そんなナルトを支え続けてきたのが日向の子供達であるから、彼等に対しては感謝こそすれ
恨むなどということはけしてないのだが。 ナルトをあそこまで追い詰めておきながら、今になって『迎えに来た』などとほざくうちは
の嫡男を、どうして疎まずにいられようか。 安曇と同じく当時のナルトの側にいた伊吹の表情もまた、厳しい。 「あーヤダヤダ。どうして僕達があんな奴に知らせてやらなきゃなんないのさっ」 蚊帳の外にしておいても全然問題ないと思うけどね、とのヤケ気味な言葉に。 刹那は更に複雑そうな顔をする。 「俺と鴇は外部の人間だからその辺りの事情は知らねぇけどよ、坊の本心を考えたらやっぱ
そういう訳にもいかねぇだろ」 「そりゃあそう、だけどさ…………やっぱ納得できないよ。言っとくけど、誰も『気に喰わ
ないからそんなこと知ったこっちゃない』なんて言ってないからね!?―――――そうじゃ
なくてさ、うん。やっぱ納得できないの」 「無理に納得する必要はないのでは?」 安曇にそう言われ、伊吹は安曇を見上げた。 「納得しろ、という方が無理な話でしょう。そうするには、彼のしたことはあまりにも大き
すぎます。しかし、一番納得できないのは」 馬車が消えていった方向に視線を向け、安曇は苦しげに目を細めた。 砂地に残る車輪の跡が、風に吹かれて埋まっていく。 こんな所にいつまでもいて、井戸端会議をしている訳にはいかない。 いつだって、時間は無限ではないのだ。 特に、今は。 「私達がどんなに御子のことを思おうと、結局、御子を救えるのは彼しかいないということ
ですね」 それこそ、真綿で包むような庇護と『家族の愛情』というものを与えた日向にだって、ナル
トを救うことなどできやしない。 今までもこれからも、ナルトが真実求めるのはただ一人の男。 それがどれだけ口惜しいか、彼の少年は知らないのだ。 「私は彼が憎くて堪りません。愚かな里人よりも、誰よりも。しかし、私の私情など、御子
がこれから迎えざるをえない現実を前にすれば、ただの我が儘でしかないでしょう?」 だから行く、と。 いろいろな感情を押し殺した目を笑みの形にして、安曇は言う。 「安曇ってば割り切るの上手いよね。僕とてもじゃないけど無理。顔見たとたん仕掛けちゃ
うもん。悪いけど、安曇と刹那だけで行ってくれる?」 「それは構いませんが、それではあなたと鴇はどうするんです?」 「姫に気取られないギリギリのところに貼り付いてる。本当に放っておいて、僕達の知らな
いところで死なれるのは嫌だからね。それに、そうすれば安曇達も安心でしょ。鴇、それで
いいよね?」 伊吹の提案を呑んだらしい鴇は小さく頷き、安曇に向かって犬を追い払うような仕草をした。 曰く、さっさと行け。 コンマ単位で形成されるのは、安曇の渋面だ。 「あなたって人は、つくづく勘に障る人ですね。何か私に恨みでもあるんですか」 「安曇が一番多く姫と一緒にいるからじゃない?アイツが現れるまでは、姫の教育係の最有
力候補だったもんね。だから余計」 「男の嫉妬は見苦しいですよ、鴇」 その言葉を耳にしたと同時に無表情で印を組んだ鴇を見て、刹那は慌てて飛びずさった。 「じゃ、じゃあ行ってくるかんな!坊のこと頼むぜ!!」 安曇よりも一足早く、瞬身の術である意味戦場であるこの場所から立ち去ってしまう。 刹那と違って安曇は逃亡することはなかったが、それでも本気モードになった鴇を前にして
のんびりとしてはいられない。 「御子に言われたでしょう。喧嘩は御法度ですよ」 口早にそれだけを言い、安曇もまた瞬身の術でこの場から消えた。 残された伊吹は、爆弾を投下するだけ投下していった安曇を恨みつつ、不完全燃焼状態の鴇
にぎこちなく笑いかける。 顔が引き攣るのは、致し方ないことだろう。 「と、とりあえず鴇。その術が発動する直前の貯まりに貯まったチャクラ、どうにかしてく
れない?」 暴発寸前のチャクラの熱が、伊吹の外套を焦がしていた。 「…………良かったのか?」 「何が?」 「あの男達を置いてきたことだ」 背中に背負った瓢箪ごと壁に寄り掛かっていた我愛羅の問いに、ナルトはしばし考えた後、
ヘラリと笑った。 「実はちょっとだけ後悔。絶対なんか揉めてるだろうからな」 「そうだとわかっていて、なぜわざと離れるような真似をする」 「いや、最近俺のせいで思い詰めてるみたいだったからさ。少しの時間だけでも俺から解放
してやろかな〜って思ってさ」 「あの人達がそう望んだのか」 どこかで聞いた詰問に、ナルトは『さぁ、どうだろ』と曖昧な返事を返す。 馬車の中だということで外套を脱いだナルトは、気持ち軽くなった身体で盛大に伸びをした。 陽光による攻撃から逃れることができたが、この移動が終わったら、またすぐにこれを羽織
らなければならないと思うと少しだけ嫌気が差したのは、おそらく気のせいではない。 「少なくとも、俺には解放されたがっているようには見えなかったがな」 「…………なんか、お前が言うとヤケに怪しいよな。その台詞」 伏せていた目を上げた我愛羅の背後で、砂が動く気配がする。 「死ぬか?」 「バーカ、お前が死ね」 傍聴者がいたらあまりの恐怖で失禁してしまいそうな、危険レベル特Sクラスの子供達によ
る言葉の押収だが、この時唯一傍聴者になりうるテマリは馬の手綱を握っていたため、幸運
なことに被害者が出ることはない。 咽の奥で笑っていたナルトは、背筋にぞわぞわと這うものを感じ、傍目にはわからない程度
に身を震わせた。 それにしても、ここは涼しい。 いくら陽光を遮断する荷馬車の中にいるからといって、外気とのこの温度差は常識を逸して
いる。 むしろ、寒いくらいではないだろうか。 長袖長ズボンということに変わりはないが、先程と比べれば充分『軽装』と言える格好をし
たナルトは両の腕を擦り、平然としている我愛羅に再び声を掛けた。 「なぁ、ところでこの中ってどういう仕組みになってる訳?」 「何がだ」 「だからこの中だよ。馬車の中。えらく寒い気がするのは俺の気のせい?」 ナルトの言うことは訳がわからない、と。 黙したまま聞き流そうとした我愛羅は突然はっとし、パオに似た組み立て様式の合わせ幕か
ら、外の様子を窺うように顔を出した。 驚いたのはナルトだ。 予想だにしなかった我愛羅の行動により突如として襲ってきた白い光の濁流を直に受けてし
まったナルトは、目を押さえて小さくうめいた。 「イッタ〜…………んの馬鹿狸!いきなり何さらす!!」 少し前に流行った膝かっくんの要領で我愛羅の膝の裏を蹴ろうとしたナルトだったが、黙り
こくっている我愛羅と、我愛羅と似たような状態になっているテマリの不審に思い、霞みが
ちな目を静かに外界へと向けた。 徐々に晴れていく視界が先程と同じように白いのは、おそらく気のせいではない。 そう。 そこには青い空と照りつける太陽はなく、あるのは真夏の入道雲よりもなお色の濃い雲と真
冬の白い大地だった。 空から舞い降りてくる極小の物体がナルトの頬に触れる。 一瞬だけの冷たさがやけに心地良い。 頬の上でじわりと溶けた雪の痕跡を半場呆然と拭い取り、ナルトは外に目を向けたまま我愛
羅の肩に手を置いた。 「何、コレ」 砂漠に降った雪が、早くも砂地部分を覆っている。 ―――――というよりも、それ以前の問題だ。 「なんで砂漠に雪が降るんだ!?」 「あぁ、そうか。うずまきはこれを見るのは初めてなんだな」 どこか誇らしげなテマリ。 だんまりの我愛羅よりも答えてくれる気満々の彼女に、ナルトはこの異常気象の理由を問う
た。 「一体なんなんだ、コレ」 「毎年この時季になると十月の中旬まで気まぐれに降るんだ。学者達は低気圧がどうとか寒
気がどうとか議論を繰り返しているが、原因はいまだにわからない。ただ、北東からの風が
吹き付けるようになるとこうなるらしい。もうすっかり砂隠れの名物さ。年に数回のことだ
し、この辺りでは雪なんて通常お目に掛かれないだろう?それに雪は溶けるから、里人は皆
喜んでいるんだ」 テマリさん。 ちょっと説明が不親切です。 「つまり水が手に入るからだろ?ここら一帯は雨季がないせいで、地下水を節約しながら使
わなきゃならないから。それはそれでいいんだけど―――――やっぱこう、非現実的な光景
だよなぁ〜…………」 「私もそう思うが、まぁいいじゃないか。害がある訳でもないし、何より綺麗だ」 「うわ、乙女発言」 ニヤリと笑ったナルトに気付いたテマリは、少しだけ赤くなって『悪かったな。どうせ似合
わないさ』という不機嫌そうな声を発したが、次のナルトの台詞を耳にした瞬間手綱を離し
そうになる。 「なんで?可愛いのに」 それが意識してのものだったら『キザったらしい男』と鼻で笑うのだが、いかんせん、無自
覚からポンポンと生み出されるものだから、まったくもって性質が悪い。 しかも標準以上の容貌に最上級の笑顔を浮かべていることが多いから、どんなに無関心を装
っても惹かれずにはいられないのだ。 どこからどう見ても目の前で姉を口説いているとしか見えないナルトの様子に、実弟である
我愛羅は何も言えない。 これは一種の病気だろう。 そんな二人の心情を知らないナルトは不自然な光景に再び視線を戻し、『北東から吹き付ける
風かぁ』と呟いた。 どこか懐かしい匂いがするその風は、ナルトを酷く安らいだ気分にさせる。 労わるように、守るように。 ただひたすらナルトだけに優しい、この風。 そして、気付く。 「…………北東?」 風の国から北東といったら、そこは火の国で。 そこから吹き付ける風が引き起こす、今から十月中旬にまで渡る異常気象。 人の仕業でも、自然現象でもありえない。 だってこれは、ナルトにだけ感知できる妖力によるものだ。 「なぁ、テマリ。もう一つ聞いていいか?これはいつ頃から降り始めた?」 我に返ったテマリが、ナルトの問いに澱みなく答える。 「十二年―――――いや、もうすぐ十三年か。とにかくそれぐらいになるな」 あまりにもできすぎた符号の一致に、ナルトは眩暈を覚えた。 なんのこっちゃない。 かつて九尾がその絶大な力で治めていた森が、全てを失った日が近付くと、人間の手によつ
て奪われてしまった主に想いを馳せて泣くのだ。 木の葉の里人にとっての『嘆きの日』は、まさに人外の者にとっての『嘆きの日』でもある
ということなのだろう。 なぜ雪という形なのか、なぜ木の葉ではなくわざわざ隣国の砂に降るのか。 それはわからないが、少なくとも害はないというのだからその点は安心だった。 「…………今年は早い」 我愛羅の言葉に、テマリも同意を示す。 「そういえばそうだな。いつもよりゆうに二月は早いんじゃないか?」 「気付いたんだろうさ、タイムリミットに」 だから、余計泣く。 『嘆きの日』に向けてではなく、『終わりの日』に向けて泣くのだ。 ごくごく小さな声で洩らした台詞は、目が合った我愛羅がどうかはわからないが、どうやら
テマリには聞こえなかったらしい。 「何か言ったか?」 「いや、なんでもない。それより今更だけど、俺が向かってるトコってどこ?お前等が拠点
にしてるオアシス?」 「…………言ってなかったか?」 恐る恐るナルトを振り返ったテマリの顔が『しまった』と歪められているのを見て、嫌な予
感に襲われたナルトもまた、顔を歪めた。 「私はてっきり、うずまきはもう知っているとばかり思っていたものだから、勝手に馬を走
らせていたが…………やっぱりどこか経由した方が良かったか?」 「―――――ということはつまり、この馬車は『神楽』の本拠地直通線だったと。そういう
こと?」 「い、今から戻っても構わないぞ」 テマリの提案を、ナルトは大きな溜息と共に切り捨てた。 「もう門番が見えてるってのに、ここで引き返すのは正気の沙汰じゃないな。やましいこと
があるのを自分から暴露してるようなもんだぜ?」 だから、引き返すことはできない。 この先に何が待っていようとも、前に進むしかないのだ。 「下準備なしのガチンコ対決…………なーんかやな感じ」 そうこうしているうちに、馬車は第一関門に突入していた。 神楽が本拠地とする集落は、砂隠れの里の中枢からわずかに離れた場所にあった。 穏健派の動向を探るにはもってこいの位置を陣取っているが、風影のお膝元と言っても過言
ではない場所に胡座をかいているようなその神経に、ナルトは図らずとも感心してしまう。 余程の度胸の持ち主だ。 「思想はともかくとして、度胸だけなら現職の風影よりも『影』を名乗るに相応しいんじゃ
ないか?」 「そう言ってくれるな。そのせいでこっちは多大な迷惑を被ってるんだ」 「そうデシタ。お前等もつくづく苦労人だよなぁ…………」 最初の打ち合わせ通り、無事に検問を通過することができた一行は、その拠点内にあった風
影の別邸に迎え入れられた。 風影の別邸というからには、本来ならば風影の所有物件ということになるのだが、ついに両
親を亡くしてしまった甥と姪のことを不憫に思った現風影―――――我愛羅達の父親の弟が、
三人揃って住めるようにと譲ってくれたのだという。 名義は三兄弟になっているものの、維持費など、何から何まで全てにおいて負担してくれて
いるらしく、下忍の少ない報酬でも充分にやっていけるのだそうだ。 その上、ナルトに喧嘩を売ってくれた神楽からは、週に一度ハウスキーパーが派遣されてく
るのだと聞き、ナルトは口に咥えていた焼き菓子を盛大に噛み砕いた。 「…………なんだ、愛されてんじゃん」 嫌味でもなんでもない素の言葉に、三人は『どういう反応を返せばいいのかわからない』と
いった顔をした。 『穏健派』とか『過激派』だとか。 そういうことに関してはうんざりしているものの、どちらの叔父も嫌いではないというのが、
三人の本心らしい。 「まぁ、いいんじゃない?まだ子供の範疇に含まれるんだし、やってくれるってことはやっ
てもらえば。でも、そうだな…………その分、立場が苦しいよな。ちなみに、ここが監視さ
れてるってことはないか?」 「それはないな。私達の中では我愛羅が一番神経質だろう?その我愛羅が何も言わないなら、
私達に監視はついていないということだ。もっとも、この家の中に限ってのことだが」 「そりゃあそうだろ。政権奪取を目標に掲げるなら、本拠地内の動きくらいは把握しとかな
いとどうにもならねぇし。さぁて、奴さんはいつ気付くんだろうな」 もしかしたら、もう気付いているかもしれないが。 甘い物が好きなナルトのために、カンクロウ(実は料理が得意)がわざわざ大量に作り置き
しておいてくれた焼き菓子を綺麗に平らげたナルトは、大体の地理を頭に入れたのをいいことに、
テーブルの上に広げられた拠点内の地図から視線を外した。 窓から、地上を歩いている里人を見下ろす。 お土地柄、限られた区域でしか農業ができないため、ここの里人は主に商業で生計を立てて
いる。 だから、木の葉でよく見かける農業服を着た人は少なく、人前に出ることを意識したそれら
しいものだった。 唯一共通していることといえば、雪が降っているため防寒対策が万全だということくらいだ。 その中には、どこからどう見ても堅気とは思えないような服装をしている人間も混ざってい
るのだが、すれ違う人が気にする様子はない。 この辺りでは、さして珍しいことではないのだろう。 頬杖をついていたナルトは、ふと思い立ったように顔を上げた。 「…………少し、出てみるか」 「うずまき?」 「俺、ちょっと外出てみるわ。とりあえずお前等はここにいろ」 立ち上がったナルトを、我愛羅が止める。 「どこへ行くつもりだ」 「だーから外だって、敵陣視察。じゃあ行って来ます」 「俺も行く」 珍しいこともあるものだ。 まさか我愛羅が、自分からナルトと行動を共にしたがるだなんて。 退く気配など微塵も見せない我愛羅に、ナルトはすぅっと目を細め、『勝手にすれば?』と遠
回しな了承をした。 「うずまき、なら私もっ」 「俺も行くじゃん」 「そんな大所帯で動けないって。連れは精々一人だ。悪いな」 立ち上がって同行を申し出た二人には本当に悪いが、事実、本当にあまり目立つようなこと
はできないのだ。 同行を許せるのは、確実に自分の身は自分で守ることができる人間。 テマリもカンクロウもすでに下忍レベルを軽く超えているが、我愛羅と比べたら実戦経験に
差がありすぎる。 暴走さえなければ、我愛羅は申し分ない逸材だ。 それに、協力してくれる三兄弟のためにも、神楽が甥達をはっきり『障害物』と認識しない
ようにしなければならなかった。 ナルトと三兄弟間にあるパイプは、察知されてはいけないものだ。 自分の顔を知られている以上どうせ変化はするつもりだが、迂闊な行動は避けるに越したこ
とはない。 「大丈夫。ホントにちょこっと出るだけだから。すぐに戻って来る」 「本当だな?」 「あぁ、たぶん。おそらく。きっと」 「…………それは信用してもいいのか?それとも信用しないほうがいいのか?」 「解釈はご自由にどうぞ。だけどな、それが無理でも死体になって戻って来ることだけはな
いから安心しろ。それに、俺ってば熱烈に愛されちゃってるからさ、わざと離したけど絶対
くっついて来てると思うんだよね」 何が、とは言わない。 そんなことは、口にするまでもなくわかりきったことだから。 過保護でワンワンな彼らが主から完全に離れるなど、初めから無理な話なのだ。
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